ビフィズス菌について

ビフィズス菌って何なの?

ビフィズス菌は、私たち人間のお腹の中にすんでいる細菌、いわゆる腸内細菌の一種です。大腸の腸管内にいます。ですから、ビフィズス菌を調べるときには、糞便を分析します。 
 大腸には酸素がありません。そこで生きているビフィズス菌は、ほかの多くの腸内細菌と同じように、酸素があると生存できない「偏性嫌気性菌」です。培養するときには、酸素をなくした状態で行います。
 ビフィズス菌は、人間のほかにも猿やにわとり、牛、羊、犬、猫、ねずみなどの動物たちや、ミツバチの腸管からも見つかっています。

ビフィズス菌の名前の由来は?

 ビフィズス菌は、1899年に発見されてから、長い間、乳酸菌の一種である「ラクトバチルス・ビフィダス(Lactobacillus bifidus)」とされていました。顕微鏡で観察すると、ビフィズス菌の多くがYの字型に枝分かれしており、その形から、ラテン語の「分岐、ふたまたの」という意味のbifidusという名前がつけられたのです。当時、これを日本語読みすることで、ビフィズス菌あるいはビフィダス菌という名前が定着したのでしょう。
 現在では、32菌種2亜種存在することが分かっています。

ビフィズス菌と乳酸菌の違いは?

 乳酸菌は、大量に乳酸をつくりだす細菌の総称です。ビフィズス菌も乳酸をつくりますが、それ以上に酢酸もつくることに特徴があります。また、乳酸菌は酸素があっても生きていられますが、ビフィズス菌は酸素のあるところでは生きていられません。
 乳酸菌の学術的な定義を表に示してみました。以下に当てはまらないものは、乳酸菌ではありません。


乳酸菌の定義
①グラム染色陽性(グラム染色すると青くなる)
②運動性なし
③グルコースを利用して作る代謝物の内50%以上が乳酸である
④カタラーゼ陰性(過酸化水素を分解する酵素がない)
⑤通性嫌気性(無酸素条件を好むが、酸素があっても大丈夫)
⑥内胞子なし(環境悪化時に胞子を作って難を逃れる方法を持たない)
⑦従属栄養(我々哺乳類と同じく体外から有機物を取り入れてエネルギーとする。)
⑧GC含量が55%以上(DNAを構成する塩基の内グアニンとシトシンが55%以上を占める)

ビフィズス菌と乳酸菌のどちらがすぐれているの?

 ビフィズス菌でも乳酸菌でも、きちんと研究され、保健効果が科学的に証明されたものであれば、どちらでも体に良い菌であると言えるでしょう。
 一方、ビフィズス菌でも乳酸菌でも、実は何の効果もないという菌株もたくさんあります。その場合、ビフィズス菌や乳酸菌が入っているから良いとは言えないので、注意が必要です。 。

「菌株」とは何ですか?

 菌種と菌株には大きな違いがあります。他の生物と同様に、細菌も系統分類学的に分類され、属名や種名があります。菌種とは細菌の種類を表わすものです。現在では、細菌からDNAを抽出して調べることで、菌種は同定できます。一方、菌株とは、個々の由来(分離源)などを識別したもので、菌種より細かい識別となります。
 簡単に言うと、人間やチンパンジーといった動物種にあたるものが「菌種」であり、AさんやBさんといった個人レベルを指すのが「菌株」なのです。AさんとBさんには、それぞれ能力の違いがあるわけですが、ビフィズス菌や乳酸菌は、その違いを「菌株」というレベルで識別し、研究されています。
 たとえば、「LKM512」。これは、菌種名は「Bifidobacterium animalis subsp. lactis(ビフィドバクテリウム・アニマリス 亜種ラクティス)」で、菌株名が「LKM512」です。菌株名は分離した研究者や使用する機関で、自由に命名してよいことになっています。
 ちなみに、「LKM」はLaboratory of Kyodo Milk (協同乳業研究所)の頭文字で、「512」は管理番号を示します。

ヨーグルトにはビフィズス菌が入っているの?

 ヨーグルトは、一般的には、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus (ラクトバチスル・デルブルエッキ 亜種 ブルガリカス)と、Streptococcus thermophilus(ストレプトコッカス・サーモフィラス)という2種類の乳酸菌で牛乳を発酵させたものを意味します。。(最近では、これら以外の乳酸菌で発酵させたものもヨーグルトとすることが多いですが。)というわけで、これらの乳酸菌は入っていますが、すべてのヨーグルトにビフィズス菌が入っているわけではありません。ビフィズス菌は保健効果を付加するために、わざわざ食品メーカーが添加するものだからです。
ちなみに、それぞれのヨーグルトで風味や食感が違うのは(甘味料やフレーバーの影響は除く)、乳酸菌の菌株が異なるからです。また、ほとんどの発酵に使われる乳酸菌は胃酸で死んでしまうため、腸までたどりつくことは期待できません。

「ヒト由来の乳酸菌」って何?

「ヒトから生まれた乳酸菌」というキャッチコピーが話題になっていますが、人間の糞便から分離したという意味であり、乳酸菌がお腹の中にすんでいたということを表現したにすぎません。
「ヒト由来の乳酸菌がヒトには定着しやすい。安全である」という考え方に、科学的根拠は何もありません。個人で免疫系は異なりますし、他人の腸に棲んでいるからといって、自分の腸に合うとは限らないのは容易に想像できると思います。イメージの問題です。そもそも他人の糞便からとり出したと考えたら、気持ち悪く感じる方もいるのではないでしょうか(笑)。冗談はさておき、私たちがふだん食べている納豆やヨーグルトに使われている細菌は、ヒト由来ではありません。また、菌はほとんど素通りで、定着性が高い菌株でも、長くても数週間で腸から排泄されてしまいます。「ヒト由来」を意識するよりも、科学的根拠のある強い乳酸菌やビフィズス菌を継続的に摂取することのほうが有効です。

オリゴ糖でビフィズス菌は増えるの?

 オリゴ糖は、3つ以上10個程度の単糖が結合したものであり、ビフィズス菌などの腸内細菌の栄養になるものです。  消化酵素や腸内細菌に分解されずに大腸まで到達し、ビフィズス菌にのみ利用されるオリゴ糖が開発されているため、大腸内のビフィズス菌の数が増えるという作用が期待されています。  しかし、高齢者や抗生物質を服用している人など、大腸内にほとんどビフィズス菌がいない場合には、オリゴ糖のビフィズス菌増殖作用は全く意味がないと考えられます。

ポリアミンで腸管のバリア機能を高められるの?

 腸管には、栄養や水分を吸収する役割と同時に、腸管内に現れる炎症要因物質やアレルゲンを体内に侵入させない役割があり、これをバリア機能といいます。
 腸管は一層の上皮細胞で、細胞どうしが密着して成り立っていますが、これに関わる種々のタンパク質合成が、ポリアミンにより活性化されるのです。
 また、この上皮細胞は粘液を分泌して粘液層を形成し、さらに抗体(sIgA)を出すことで有害物質の侵入をガードしているのですが、この働きをポリアミンが促進するのです。

ポリアミンがDNAを安定させるとはどういうこと?

 ポリアミンは、成長が盛んな乳児期の細胞や精液中で高濃度に含まれています。細胞が増殖する時にたくさん作られますが、それはポリアミンが細胞分裂時に必要だからです。
 細胞内に存在するポリアミンの大部分は、核酸(DNA、RNA)と結合しています。つまり、生命体として最も重要な遺伝子を安定させるという大事な役割を果たしているのです。

ポリアミンには炎症を押さえる働きがあるの?

 はい。ポリアミンの重要な役割のひとつに、抗炎症作用があります。
 特に小さな炎症が継続的に生じる慢性炎症は、老化の主要因と考えられています。炎症反応は生体を守るために起こるものですが、老化によって暴走することが多くなります。
 自然免疫系(抗原抗体反応ではなく、体内に侵入して来る異物なら何でも食べてしまう免疫系)により、炎症性サイトカインが分泌されることで炎症が起こりますが、ポリアミンはこの分泌を抑制することが知られています。

腸内細菌がポリアミンを作るのですか?

 はい。腸内細菌のいない無菌のマウスと、通常のマウスの大腸におけるポリアミンの濃度を比較すると、通常の菌叢マウスの方がポリアミンの濃度が圧倒的に高いと評価されます。
 ポリアミンを自ら作ることができる菌種もあれば、大腸中のポリアミンを吸収する菌種もいます。このバランスで腸管内のポリアミンの濃度は決まるのですが、いずれにしても、腸内細菌が高濃度になる菌種構成がカギになります。
 プロバイオティクスLKM512は、腸内環境を大きく変える作用があり、変動した菌種構成により、ポリアミン濃度が高くなります。

ポリアミンはサプリメントで摂取できますか?

 法律で、ポリアミンをそのままサプリメントで摂取することは禁止されています。しかし、大豆やチーズ、白子などにたくさん含まれているので、食品からポリアミンを摂取することができます。
 マウスの実験で、大豆の2倍程度のポリアミンを与えたところ、毛並みが良くなり寿命が伸びたと自治医科大・早田邦康先生のグループから報告されています。
 しかし、口から摂取したポリアミンは、小腸で吸収されるため大腸に届かず、老化を抑えることができません。また、一過性であり、吸収されてしまえばそれで終わりです。
 そこで、私たちが考えたのは、ポリアミンを腸内細菌に作らせる方法です。マウスにLKM512を投与し、腸管内でポリアミンを作らせてみたところ、口からポリアミンを摂取させたマウスに比べて、大腸の老化が著しく抑えられました。さらに、10時間後には食べたポリアミンの量を超え、24時間後には2倍以上のポリアミンを供給できるようになりました。
 ポリアミンを多く含む食品は、白子や魚卵など、どうしてもカロリーが高いものやプリン体を多く含むものが多いのですが、腸管内でポリアミンを作らせれば、余分なもの取る必要もなくなります。

ポリアミンはガンを起こすと聞きましたが、本当?

 ポリアミンがガンを作るという報告は、世界中のどこを探しても存在しません。
 ただし、ガン細胞が自らポリアミンを作り出すので、ある種のガン患者さんの尿を調べると、特定のポリアミンが増えることは知られています。そして、これを背景にガンを調べる腫瘍マーカーとして扱われて来た歴史はあります。
 ポリアミンは、細胞の成長に欠かせない物質です。正常細胞の成長や増加に必要であるのと同じように、ガン細胞を作り出すこともあるのです。誤解しないでほしいのは、実験としてガン細胞を持つ動物にポリアミンを投与するとガン細胞が増えますが、正常動物にポリアミンを与えても、ガン化しないこと。
 そもそも、ポリアミンはDNAの突然変異を抑える力が強いので、ガンを発症し難くなると推測されます。
 とはいうものの、生研センター委託研究審査でもこの点が問題視されましたので、安全性を証明するため現在実験中です。

ポリアミンの語源は?

ポリ(poly)とは、「多数の…」「複」の意味で、複数のアミン(-NH-)を含む化合物の総称です。ちなみに、最も活性の強いポリアミンはスペルミン(Spermine)といいますが、これは精液で最初に発見されました。そこで、精液Sperm+アミンamineを合わせてSpermineと名付けられたのです。

3種類のポリアミンの役割を教えて!

 ポリアミンには、プトレッシン、スペルミジン、スペルミンの3種類が存在します。
 これらは、プトレッシン→スペルミジン→スペルミンの順に生体内で合成されます。一方、活性の強さはその逆で、スペルミン→スペルミジン→プトレッシンの順番になります。
 生命活動には、「余計なことはしない」という原則がありますので、活性の低い順に合成し、いざという時にのみエネルギーを使って活性の強いものを生み出すのでしょう。
 不思議なことに、人間の腸管ではプトレッシンの濃度が最も高く、ついでスペルミジンで、スペルミンは検出されない場合もあります。プトレッシンは腸管上皮細胞に吸収され、必要な時に細胞内でスペルミジンやスペルミンに変換されているものと推測されています。

ポリアミンは、生命活動になくてはならないものなのですね?

 そのとおりです。ポリアミンにはたくさんの機能がありますが、すべて生命活動に関わっています。
 興味深いことに、全生物が共通してポリアミンを生体内に持っているということです。全生物というのは、微生物から、魚類、両生類、鳥類、哺乳類、さらには植物も含みます。
 全生物の生命活動にとってポリアミンは必須であり、重要な物質なのです。

ポリアミンは寿命をのばすと話題になっていますね

 私たちは、腸内細菌が作るポリアミンの重要性を2001年に初めて発表しました。そのときには話題になりませんでしたが、2009年に一転しました。
『Nature Cell Biology』という著名なジャーナルに、ポリアミンが寿命をのばすことに関連しているという論文が掲載されたからです。
 この論文では、酵母、線虫、ショウジョウバエ、ヒトの免疫細胞にスペルミジンを投与したところ、寿命がのびたことが発表されました。
 また、私の研究で明らかになった大腸内のポリアミン濃度が高まると寿命がのびるという仮説は、『Medical Hypotheses』というジャーナルで発表しており、すでに認められています。

ポリアミンはアンチエイジングに効果があるの?

 若い時は、自らの細胞がポリアミンを生み出します。ですから供給する必要はありません。しかし加齢にともない、ポリアミンを作り出す能力が劣ること(ポリアミンが細胞を作り出す能力が劣ること?)を、複数の臓器で確認されています。
 ポリアミンには、体の健康を保つための様々な機能がありますが、細胞が作れなくなるとこれらが狂い始め、異常が現れるのです。
 ただしポリアミン不足でおちいる機能の低下は、ポリアミンさえ供給できれば防げるため、中年期以降は特にアンチエイジングに有効なのです。

イベント情報 メイトーミルク倶楽部LKM512モバイル